【実験してみた】AI vs 人間 社員を正しく見分けられるのはどっち?
街中で知り合いを見かけ、声をかけたら別人だった…。
こんな苦い経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。どれだけ相手をよく知っていても、正しく見分けるのは案外難しいものです。昨今、AIの顔認証が進化してきていますが、AIならしっかり見分けられるもの!? ……そんな疑問を持ち、AIに勝負を挑んでみました。
今回戦いを挑むのは、ソニーグループ内の技術を活用して開発中の顔認証AIカメラシステム。
このカメラには、すでにaiboやデジタル一眼レフカメラα(アルファ)に搭載されている顔認証AIと、ソニーセミコンダクタソリューションズで開発した高性能イメージセンサーを搭載。登録済データから、カメラの前の人物が本人かどうかを判定できる性能が備わっています。ソニーネットワークコミュニケーションズでは、このAIカメラをオフィスや施設で活用することで新たな付加価値を創造するようなオフィスソリューションをはじめ、事業化に向けた実証実験を重ねています。
今回は事前にソニーネットワークコミュニケーションズの社員の画像データを登録し、人間とAIカメラのどちらが精度の高い顔認証ができるか検証します。
対するは、人事部で採用や社員サポートを担当する3名。仕事柄、それぞれ半数以上の社員の顔と名前が一致しているそうです。
【勝負1】 社員の“そっくりさん”を見破れるか
最初の対決は、「社員の“そっくりさん”を見破れるか」です。人事チームとAIカメラは、社員のそっくりさんが現れても、「社員ではない」と見抜けるのでしょうか?
人事チームとAIカメラの前に、社員の“そっくりさん”が登場。横一線に並び、対戦開始です!
人事チームは、3人での相談も可能です。意見を取りまとめ、出した答えは……
両者ともに、大正解です!!!
「簡単かんたん!」「まぁ、人事ですからね!」と得意げな人事チーム。まずは互いに1勝ずつです。
【勝負2】 変装した社員を見破れるか part 1
続いては、「変装した社員を見破れるか」。変装して目の前に登場した人物が、社員かどうかを見抜いてもらいます。
ウィッグをかぶり、瞳が小さく見えるカラーコンタクトを入れてもらいました。
双方とも、またまた正解です!
「歩き方、立ち方など、全体から滲み出る『なんとなくこの人っぽい』という感覚で判断した」と人事チーム。全体の雰囲気から特徴を捉えられるのは、人間が得意とするところなのかもしれません。
【勝負3】 変装した社員を見破れるか part 2
続いては、変装のパターンを変えて「変装した社員を見破れるか」勝負します。今回は約1.5秒の時間制限を設けることにしました。
変装してくれたのは、じつは人事チームとは日常的にやり取りしている社員です。判別する時間が短くなったとはいえ、この対決は人事チームが圧倒的に有利かも……!?
1.5秒の時間制限があるため、人事チームはアイマスクをつけてのスタートです。
「この人は社員でしょうか、社員でないでしょうか?」の問いかけとともにアイマスクを外します。
人事チームも、ようやく意見が一致したようです。
AIカメラは正解、人事チームは不正解。「じつは僕です」と変装を解くと……。
「今回の変装と普段の雰囲気が、あまりに違った」「やらないはずだという先入観があった」と驚きを隠せない人事チーム。社員について知りすぎていたことが、逆効果となったようです。
【勝負4】 高校の卒業アルバムから、社員かそうでないかを見破れるか
続いては、「高校の卒業アルバムから、社員かそうでないかを見破れるか」です。大人になると誰しも多少は顔が変わるものですが、果たしてAIカメラと人事チームは社員かどうかを正しく判定できるのでしょうか?
双方とも大正解!
人事チーム曰く、「そこまで大きく変わってなかったので、すぐにわかりました」。これが40〜50年前の写真だったら難しかったかもしれませんね。
【勝負5】 大勢の中から社員でない人を見抜けるか
最後の勝負は、「大勢の中から、社員でない人が何人いたかを答えられるか」です。制限時間は1.5秒、短時間で正確に把握することは可能なのでしょうか?
双方とも、暗幕を用いての勝負です。果たして勝負の行方は……?
正解は、「外部の人が1人紛れ込んでいた」です!AIカメラは正解、人事チームは不正解でした。
「やってしまった〜!」と叫ぶ人事チーム。「誰のことを社員でないと思ったんですか?(笑)」の問いかけに「すみませんでした!」と声を揃えます。
結果は…?勝負を終えて感想を聞いてみた
すべての対決を終え、AI=全勝、人間=3勝2敗という結果になりました。
――勝負を終えてみて、どうでしたか?
人事チーム:最後の「大勢の中から、社員でない人が何人いたかを答えられるか」の勝負が一番難しかったですね。暗幕が下りた瞬間、『うわ、人が多い!』という情報が入ってきて、そこから何人いるかを把握し、ようやく一人ずつの顔を見られるようになったんです。これを1.5秒で判断できるのは、機械ならではかも。また、我々は先入観や雰囲気など曖昧な基準で判断してしまったり、見た後に少しずつ記憶が薄らいでしまったりしたのですが、AIカメラにはそういうことがないんだなと気づきました。
負けてしまいましたが、AIのすごさを実感しました。人事としては、社員の気分の落ち込みを検知する顔認証AIなど、現場で活用できるサービスが出てくるのを期待しています!
――AIカメラは、どのように顔を認証していたのですか?
開発チーム:目・鼻・口などのパーツの形状や位置の違いを捉えて判定しています。微細な差を検知するため、人の目から見ると似ている人やメイクなどで近づけた場合でも違う人だと判断できます。また、マスクで顔の一部を隠したとしても、ほかのパーツの特徴から総合的に判定できるようになっています。顔認識に関しては、じつは見分ける力は人間よりもすでに上回っています。
――AIにも苦手なことや、人間の方が得意なことはあるのでしょうか?
開発チーム:はい、あります。AIは人間と比べて状況から判断することがまだ苦手です。たとえば人間は「どこにいるか」「誰と話しているか」といった状況から確からしい人を推測することができますが、AIはまだこのような状況把握や推測の精度において人間に遠く及びません。
AIは事前に訓練された特定のパターンやデータに依存して機能しますが、人間のように瞬時に状況を理解し、情報を組み合わせて判断を下すのは難しいんです。今後、少しでも人間の判断力に近づくために、顔以外の周囲の情報も取得して認識に利用する技術の開発も検討しています。
――人間とAI、それぞれ得意なことがあるのですね。今後、顔認証AIがより進化すると、どのような世の中になるのでしょうか?
開発チーム:さまざまありますが、色々なところに認証技術が取り入れられると、たとえば人が意識しなくてもゲートが開くようなウォークスルーのシステムを作れるのではと思っています。それが叶えば、駅から自動改札を消すことも可能になります。無人レジやレジなし店舗を実現させるサービスもますます増えていくでしょう。
AIは、こうなってほしいという思いやニーズがあれば、あらゆることを実現する可能性を秘めています。人間とAIそれぞれの得意を生かし、よりよい社会を実現させていきたいですね。
▼開発チームによる後日談はこちら
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