「子育てと仕事の両立」は私ひとりの問題じゃない。職場・パートナーと話しておきたい産後のキャリア【わたしのCHANGE】
ライフステージが変わっても、自分らしく働き続けられるか――とくに子どもを持ってからの「キャリアと家庭の両立」は、悩む人も多いテーマのひとつです。
NURO事業部回線管理部で課長を務める神保真理も、同じ悩みを抱えていた一人。2013年に出産し、産休育休を経て職場に復職しました。2022年からは、課長としてマネジメントを担っています。
仕事と子育てを両立するロールモデルの一人として、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。何を考えながら仕事と向き合い、どのように両立させているのか、話を聞きました 。
仕事も家庭も中途半端でモヤモヤ……。出産を経て自分を取り巻く環境が一変した
――はじめに、これまでの経歴を教えてください。
神保:「So-net(ソネット)」の立ち上げ間もない頃に入社して、メール配信や新コンテンツの企画など、さまざまな業務に携わってきました。どれも面白かったですね。
そのころ昇進試験を受けてみないかと話をいただきましたが、結婚直後は仕事と生活のバランスが取れずに悩み、子どもが欲しいとも考えていたので残念な気持ちでお断りしてしまいました。その後、子どもを授かったのは営業施策の業務設計を担当していた2013年頃でした。
――産休中、記憶に残っていることはありますか?
神保:それまでは仕事で大なり小なり成果を出して、周りに認められたり自分の成長を感じたりする場面がありました。しかし、産後は生活が一変。会社に例えるならば、出産当日から私は24時間365日稼働の育児プロジェクトのリーダーに着任し、初めてだらけのミッションに悪戦苦闘する毎日でした。
それまで仕事を生活の主軸にしていた夫婦の生活が、赤ちゃんのお世話に目まぐるしく、一日なにをしていたのか覚えてられないほど! これほど想定通りにいかないものかと、なにか不思議な感覚でした。
産前は、育休中にそれまでできなかった勉強をしたいと考えていたのですが、それも思うようにはいきませんでした。ただ、この時期に読んだ子育てに関する本の数々は、今になって仕事上でのコーチングやマネジメントにとても役立っています。
――いざ育休が明けて復職してからは、いかがでしたか?
神保:「産休育休で不在だった分、まずはみんなに迷惑をかけないように頑張ろう」と思っていました。上司や周囲も働きやすいように気遣ってくれていたと思います。ありがたいと思う一方で、これまでよりも簡単な仕事を頼まれることもあり……。時短勤務に配慮してくれてのことですが、私にとっては希望する仕事ではなかったため「かわいい盛りの子どもを預けてまで仕事をするならベストを尽くしたいのに」と焦る気持ちもありました。
――その苦しい局面を、どうやって乗り越えていったのでしょうか。
神保:「時間が足りず迷惑をかけるかもしれませんが、もともと担当していた業務設計の仕事に戻してもらえませんか」と相談しました。上司は「じゃあ、大変なところはフォローするからやってみようか」と、優しく受け入れてくれました。
でも本当は、上司には事前にフォローをお願いしたいことを伝えたうえで「キャリアを一緒に考えてもらえないか」と相談し、パートナーとも「復職後は、家事・育児を二人で分け合いたい」と伝え、周りの人にも動いてもらえるように調整できていればよかったなと思います。
そして、その頃から少しずつテレワークをスタートさせたのも、両立へのターニングポイントとなりました。
若い世代や働く女性にとってのロールモデルになりたい。マネージャーへの昇進を決めた理由
――お話を伺っていると、復職後は自分の働き方を確立するだけでも大変だったように感じます。加えて、マネージャーになることを視野に入れたのはどうしてですか?
神保:子育て関連の新規事業企画プロジェクトに参加した際に、気付きとなることがたくさんあったんです。「どのように仕事と子育ての両立を行うか」「何をフォローしていくことが喜ばれるか」を検討するなかで、多くの子どもを持つ方にインタビューする機会がありました。そのなかで「周りに自分の考えを伝えて、より良い状況になるよう計画・調整することが子育てには必要」「子育てをしながらも着実にキャリアを積み上げているロールモデルがいればおのずと後進はついてくる」ということに気づきました。
ただその時、私はもう昇進は無理だと思っていたので、一緒に活動していた後輩女性たちに「次の世代の女性社員のために、あなたたちが管理職になってね」と託したんです。
――一時は昇進を諦めた神保さんがロールモデルとなるための一歩を踏み出したのは、どのタイミングだったのでしょう。
神保:2019年にNURO事業部に異動し、一年ほど経ってからですね。2020年の3月、突然コロナ禍が始まり、娘の小学校が休校になってしまいました。残業どころか出勤もできなくなり、一時は退職も頭をよぎりました。上司に「退職したくないがどうすれば……」と相談したところ、テレワークできる日数や時間を増やすことができたのです。
娘の世話や学習面のケアをしながら自宅で仕事ができるだろうか、と当初は戸惑いもありましたが、通勤にかけていた時間も業務にあてることができ、自分のペースで効率的に仕事を進められることに気づきました。その結果、周りの手も借りつつ進めた開通センターに関する業務改善の成果が認められ、再度「昇進試験を受けてみないか」と声をかけていただいたのです。
私でいいのかと不安はありましたが、実は前段でお話した後輩の女性社員が私より前に昇進していたのが大きなきっかけになりました。彼女が「真理さんのあの言葉があったから管理職になろうと思いました」と言ってくれて。嬉しかったですね。自分が背中を押したからには、自分に巡ってきたチャンスとも向き合わなければと思いましたし、女性の管理職が増えれば組織や制度への視点も増え、より両立しやすくなるのではと、マネージャーにチャレンジすることにしました。
自分が目指す姿を描き、周囲に伝える。自分に足りていなかったキャリアへの視点
――キャリアと子育てを両立するために、ご自身の経験を踏まえてアドバイスはありますか?
神保:まずは、自分のキャリアプランをきちんと考えてみてほしいです。そのうえで、子どものいる生活を視野に入れているなら、目指すキャリアを周りにも伝えて、パートナーと役割分担をする。上司にも「こんな仕事がしたいので、こういうフォローがほしいです」と、明確に相談する。産んですぐは子育てでいっぱいいっぱいになってしまうと思うから、できれば子どもを持つ前に話しあっておけるといいですね。
――「周りに迷惑をかけてはいけない」と気負うような気持ちでいたのが、いまでは「周りに理解してもらう」と考えるように変わったのですね。
神保:自分で決めて、宣言して、みんなを巻き込んでいかないと仕事は回らないし、楽しくもならないんだなってことに気づいたんです。それに部署の仲間や会社のママ・パパたち、新規事業企画の方々といろんな話をするなかで、周囲が両立に関するたくさんのナレッジを持っていることを知りました。助けになるものはたくさんあったのに、自分が閉じてしまっていたのだと痛感しました。
――ご自身の力で道を切り拓き、あとに続く人たちをも照らそうとする姿勢が、まさに行動指針のひとつである「GEnerate(変革の熱源になる)」(※)だなと感じました。
神保:キャリアを振り返ってみると、「あそこで諦めたらキャリアが途絶えていたかもしれない」と思う場面がいくつもあるんです。だからこそ、どのような状況でも「これがやりたい」「あれがいいと思う」と伝えることが大事。また、マネジメントでは、対話を通じて相手のモチベーションがどこにあるかを理解し、やりがいを伸ばせるように心がけていきたいです。
――仕事と子育ての両立という観点で、いまソニーネットワークコミュニケーションズはどのような会社ですか?
神保:さまざまなコミュニケーションツールが整備され、テレワークもできるようになり、子育てをしながらでも働きやすい環境だと思います。ライフステージが変わっても働き続けたいと考えている方には、ぜひ安心していただきたいですね。ライフステージや価値観に応じたさまざまな働き方を認め、その背中を押してくれる土壌もあります。
――神保さんご自身は、この先どのように働いていきたいですか?
神保:今、私が関わっている「NURO 光」は年々成長を続けています。整備を進めるインフラをいかに効率化してスピードアップするかが私のミッションなので、まずはこの仕事をしっかりとやり遂げたいと思っています。それから、子どもを持ったあとにどう働き続けていくかという課題に対しても、自分の経験を踏まえて、性別・年齢・立場問わずいろんな方と対話を重ねる中で、まだまだできることがありそう、と感じています。子育てと目指すキャリアを実現できるプログラムなどのアイデアがあり、今後をより良くしていく活動にも貢献していきたい、と考えています。
神保さんが考える「子育てと仕事を両立させる3つのポイント」
・ライフステージが変わる前にキャリアプランを考えておくこと
(変わった後からでも遅くない!)
・そのプランを実現するためになるべく役割分担をすること
(得意で好きなことは自分で。それ以外は適した人材やプロ、さらにはAIを頼る)
・困りごとや悩んだときに相談しあえる上司や同僚をもつこと
(いつでも感謝の気持ちで)