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時間と場所が自由な働き方へ。欧州発オフィスソリューション「Nimway」を日本向けにローカライズした話

コロナ禍をきっかけに、オフィスのフリーアドレス化やABW(※1)を検討する企業が増えています。働く場所を自由に選択できるメリットがある一方で、問題になるのが「混雑していて空席がない」「同僚や上司と話したいが、どこにいるのかわからない」ということ。

それらの問題を解決するため、ソニーネットワークコミュニケーションズでは、欧州発の「Nimway(ニムウェイ)」で日本のオフィス改革をサポートしています。導入においては、日本ならではのマネジメントスタイルや要望などを踏まえたローカライズが必要に。どのようにして日々サービスを磨いているか、スウェーデンの開発チームと共に挑戦を続ける担当者に話を聞きました。

(※1)ABW:Activity Based Workingの略。業務内容などに応じて働く場所や時間を自由に選択する働き方のこと。

日本と海外の働き方の違いを学ぶことで、ローカライズを成功させる

――まずは「Nimway」について教えてください。

井町:「Nimway」は、高精度のセンサーやソニー独自の屋内測位技術に基づいた、スマートオフィスソリューションです。Webやアプリからワークスペースの管理・予約をしたり、同僚が社内のどこにいるかを確認したりすることができます。また、人感センサーを使って利用状況も可視化します。

アプリやモニターに表示されたマップ上で空いている席が一目でわかるので、例えば、会社へ行く前にその日使いたい席を予約することも可能。会議室や個室の場合は、モニターに近づくだけで予約済みの部屋が表示されます。

赤は「利用中」、黄色は「予約が入っているが現在空室の席」、緑は「利用可能、空き状態」が表示される

井町:フリーアドレスで起きがちなのが、「数分席を外したら、違う人に席を取られていた」ということ。「Nimway」では、人感センサーが利用状況を検知し、設定に応じて離席後一定時間は席を確保してくれます。

テーブル下のセンサー。小さいので邪魔になることもない

井町:上司とちょっと話したいときや同僚に渡したいものがあるときは、スマホの位置情報を取得し、相手が今オフィスのどこにいるかを把握できます。

位置情報を取得するのは、天井にある小さなビーコン。これにより、フリーアドレスでもシーンに応じて必要なコミュニケーションを取ることができる

――井町さんは現在、どのような業務を担当しているのですか?

井町:「Nimway」の開発元であるSony Network Communications Europe B.V.のメンバーと共に、日本企業への導入支援を行っています。また、日本のお客さまからのご要望をスウェーデンにいる開発チームにフィードバックし、いかに日本向けにローカライズしていくかの仕様検討の要望や、事業オペレーションに関する様々な調整を担当しています。

――サービスをローカライズさせるうえで日本と海外の違いを感じることはありますか?

井町:ありますね。例えば、海外では私用のスマホを会社で使うのが一般的ですが、日本はセキュリティの観点から禁止している企業が多いですよね。会社支給の端末も一部の営業職にしか配布されなかったり、アプリの使用も制限されていたりします。当初、「Nimway」はモバイルアプリが主流だったので、PCユーザーが多い日本向けにWeb版を開発してほしいとお願いしました。現地の開発チームも、そのようなニーズがあるというのは発見だと話していました。

――職場マネジメントの仕方も、海外と日本では大きく違うようですね。

井町:基本的に欧州では、徐々にグローバルでも広まりつつある「従業員一人ひとりが自立し裁量を持つワークスタイル」が主流です。プライバシーへの意識も高いので、「Nimway」でも従業員側が共有設定をしないと、たとえ上長であっても位置情報は見られません。

一方、日本では「誰がどこにいるか把握できる管理ツール」として検討されることが多いです。「Nimway」の理念は従業員の方の利便性、生産性をあげることなので、日本向けにローカライズする際もコアの考えをブラさない最適な改善策を模索しています。“The People-centered Solution”をスローガンに、従業員を真ん中に置いた製品開発しようという価値観を共有しています。

――日本独特の要望を海外チームに伝えるのは、難しくはないですか?

井町:そうですね。文化や環境など前提条件の違いから生じる、日本のお客さまが感じる使いづらさや課題に共感してもらい「それは解決する必要があるね」と納得してもらえないと検討の手も止まってしまうので、根気強く丁寧に説明するようにしています。ただ、自分たちの製品を愛しているからこそ、中途半端な機能をつけて本質が変わるのは避けたいという思いは私も同じ。互いに本当に必要かどうかを考えながら、サービスのブラッシュアップに努めています。

井町 友香(事業開発部/ネットワークSEやインフラセキュリティ製品の商品企画を経験した上で2020年に入社。趣味はバトミントン、アフリカ雑貨集め、音楽鑑賞)

「お互いを尊重する」 海外拠点と仕事をするうえで、英語力より大事なこと

――日々の業務の中で、海外とのやり取りはどのようにおこなっていますか?

井町:メールやチャットは毎日で、週に2~3回はオンラインでミーティングもします。時差が9時間ほどあるので、ミーティングは日本時間の夕方ごろに入れることが多いですね。コロナ禍の入社だったので、まだ現地に行ったりはできていませんが、今後チャンスがあればぜひ行きたいと思っています。

今年5月、普段はスウェーデンにいるNimway事業責任者が来日した際の様子。コロナ禍でオンラインでのやりとりのみだったため「やっと会えたね」と互いに感動

――海外の方と仕事をするうえで意識していることはありますか?

井町:彼らの文化や価値観を尊重することでしょうか。例えば、日本だとまず納期を明確にし、それを守る風潮があります。開発スタイルも影響していますが、スウェーデンだと確約がない限りコミットしないんです。私は最初それがピンとこなくて急かしてしまったりしたのですが、いまは文化の違いと受け入れて信じて待つ、重要な場面ではしっかりフォローするなどメリハリをつけるようになりました。

――どの程度の英語力が必要でしょうか?

井町:もちろんコミュニケーションが取れる程度の英語力は必要ですが、伝えようとする思いがあれば、相手もしっかり聞いてくれるので仕事としては成立すると思いますよ。

「ITは世界のあり方を変える」 Nimwayらしさを大切に、自分たちだからできることや価値に向き合いたい

――そもそも、なぜIT業界を志したのですか?

井町:学生時代、NGOのインターンとしてケニアに長期滞在したことがあって、その際、現地のIT系スタートアップ企業が人々の暮らしを支えていることを知ったんです。いまでこそ日本でも使われるようになったモバイル決済は、10年前のケニアではすでにみんなが使っていて。支援に行った先で、自分の国よりはるかにIT化が進んでいる様子を目の当たりにした衝撃はいまでも忘れられません。

モバイル決済は、都市部に出向いて銀行口座を作れない貧困層の人々の暮らしを劇的に変えていました。「ITは世界のあり方を変える」と学んだのをきっかけに、自ずとこの業界を志すようになりました。

――ソニーネットワークコミュニケーションズに入社した理由も教えてください。

井町:ケニアで抱いた「実際にお客さまに触ってもらえる、目に見えるソリューションに関わりたい」という思いを捨てきれなくて。いくつかの企業に話を聞く中で、ソニーネットワークコミュニケーションズで働く「人」に惹かれたことと、事業立ち上げのコアな部分に関われる裁量の大きさに魅力を感じました。

あとは初めて上長と会ったときの、自身が立ち上げに関わった事業への自負や今後の夢をまっすぐに語る姿勢が印象的でしたね。社会貢献をしたいという私の目標にも共感してくれたことが嬉しかったです。

社長の渡辺と面接した際「的確なコメントをくれ、この社長が率いる会社なら働きやすそう」とも感じたそう

――ソニーネットワークコミュニケーションズが掲げる「CHANGE」(※2)の中で意識していることはありますか?

井町:「No other」(自分たちだからできる変革を、誰にもできない変革を。)です。「Nimway」らしさを大切に、自分たちだからできることや価値に向き合っていきたいですね。

(※2)ソニーネットワークコミュニケーションズの行動指針
Challenge|リスクをとって、自ら攻める
Higher speed|変化のスピードを、進化のスピードで超えていく。
As one|共創が、進化と成果を生み出す
No other|自分たちだからできる変革を、誰にもできない変革を。
GEnerate|変革の熱源になる。

――最後に、今後「Nimway」で実現したいことを教えてください。

井町:コロナ禍を経て、テレワークと出社のハイブリッドがメインとなっていく中で、オフィスを維持するのに無駄なコストがかかってしまうことがあると思います。そのようなときに「Nimway」を導入してもらえると、スペースを最適化して、浮いたお金を働き方の改善に使うこともできるようになるはず。実際、UI(User Interface)の使いやすさについてはもちろん分析機能も好評で、オフィスのレイアウト変更に活かしていただいている例もあります。「Nimway」がデータドリブンな働き方改革を実現し、日々の業務をサポートするのが当たり前になるよう、サービスの拡張や普及活動に力を入れていきたいですね。


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