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あたかもそこにいるかのような"つながり"を届けたい 「NUROオンラインセッション」で子どもの体験格差の解消へ

子どもの頃の「自然にふれる」「友達や家族と思いきり遊ぶ」といった体験。一見何気ないことに見えるそんな体験を通し、自分を肯定的にとらえる考えや学ぶ意欲が高まると言われています。しかし、その体験の機会は住んでいる地域や育った環境によるところが大きいもの。そんな「体験格差」の広がりが、いま日本で問題になっています。

子どもの体験格差を少しでも減らすための活動として、ソニーネットワークコミュニケーションズが行っているのが「NURO(ニューロ)オンラインセッション」という社会貢献活動。体験のベースとなる場所へ高速光回線「NURO 光」を無償で提供、ソニーのテレプレゼンスシステム「窓」を使い、ソニーグループ各社が持つ技術やコンテンツを活かすかたちで子どもの体験格差の解消に取り組んでいます。

「NUROオンラインセッション」を行うに至った理由や今後の展望について、担当者に話を聞きました。

「NURO 光」×「窓」で叶えた、離れた場所をつなぐ体験

――まずは、「NUROオンラインセッション」について教えてください。

渡辺:簡単に言うと、インターネットを通じた新しいリアルタイムのコミュニケーションです。2つの離れた地域に「窓」と呼ばれるモニター装置を設置し、双方を「NURO 光」の高速回線でつなぐことで、あたかも目の前にいるかのようにコミュニケーションを取ることができます。これまでに、東京と静岡の子どもたちをつないでバンド体験をしてもらったり、幼稚園の子どもたちとアーティストをつないでクリスマスコンサートを行ったりと、主に子どもたちに新しい体験を届ける遊びと学びの場をオンラインで提供してきました。2018年から企画を考え、2019年からトライアルが始まり、今期で3年目になります。

初めて実施したトライアルイベントでは、東京と静岡がつながった(2019年12月)

――そもそも「NUROオンラインセッション」の企画はどのようにして立ち上がったのですか?

渡辺:これまでにもソニーネットワークコミュニケーションズでは「So-netの森」での森林整備活動や、乳がん検診の啓発活動であるピンクリボン活動など長年色々な社会貢献活動をしていたのですが、本業の通信を活かして社会価値と企業価値の両方を上げていくアクションができないかと考えていました。例えば、高速大容量通信が特長の「NURO 光」を用いることで、動画や音声などの双方向通信もシームレスに楽しめます。この特長を社会に活かせないかと考えました。

創業以来ソニーが子どもたちの教育支援に様々なかたちで携わってきていることもあり、「子どもたちに向けた企画」というのは早い段階で決まりました。ちょうどその頃、離れたところにいるダンサーと音楽奏者がモニター越しにつながってセッションする「インターネットがつながることで生まれる驚きや喜び」をテーマにしたプロモーション動画を他の部署が作っていて、「これ実現できないかな?」という話になりました。そこで具現化する技術をグループ内外に探す中で辿り着いたのが、阪井さんの所属するソニーグループのR&Dセンターだったんです。

渡辺 碧(経営管理部門コーポレートコミュニケーション室/2014年入社。「NURO 光」や「NUROモバイル」など様々なサービスに携わり2018年より現職。趣味はアート、食。ワインエキスパートの資格を所持)

阪井:最初に渡辺さんから企画を紹介いただいたとき、「窓」を使った音楽セッションは面白そうだな、ワクワクするものができたらいいなと思いました。とはいえ、体験格差の解消という観点から、どういったカタチにしたらいいのか、すぐにはイメージが浮かばなかったので、社会課題を認識しつつも、まずは子どもたちが純粋に楽しんでくれるような体験から考えていきませんか?とお伝えしました。渡辺さんとしては、企画趣旨と少し違っていたかもしれませんが…(笑)

渡辺:いえ、ハッとした瞬間でした。「楽しいことを実現できれば、子どもたちだけじゃなくていろいろな人を幸せにするよね」って言ってくださって。ソニーグループ内の違う立場からの意見が新鮮でした。

阪井:楽しさの中で機会が広がっていけばいいですからね。

阪井 祐介(ソニーグループ株式会社R&Dセンター/1999年ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)入社。入社以来、人と世界をつなぐ「窓」の研究・開発に携わり、2019年から「窓」の導入コンサルティング事業を開始。趣味はヨット、合気道、放浪。)

――「NUROオンラインセッション」では、「窓」が重要な役割を担っていますね。「窓」は、どのような装置なのでしょうか?

阪井:テレプレゼンスシステム「窓」は離れた場所にいても、あたかも同じ空間にいるような自然なコミュニケーションが実現できる装置です。従来のテレビ会議のように相手の顔、資料など“中心視野”の情報のみを扱うのではなく、等身大の相手や“周辺視野”に映る空間の奥行き、相手の存在感や環境音を伝えあうことで、本当に同じ空間にいるような気配や雰囲気を感じさせることができます。

リアリティの追究と同様に重要となる、心地よい“つながり感”を生む機能も

ワクワクする気持ちは子どもだけにとどまらない。「NUROオンラインセッション」の可能性

――実際のイベントで印象に残っていることはありますか?

阪井:東京と静岡をつないで、初めて遠隔でのバンド体験をしたときに、「窓」越しにギターを弾きあう子供たちはもちろん、お父さん、お母さんも、スタッフも、協力してくださったミュージシャンの方も、本当に想像以上の盛り上がりになって、びっくりしました。高速大容量の「NURO 光」と「窓」、そして音楽の楽しさが組み合わさって、新しい体験が生まれたのを感じました。

渡辺:動画配信のような一方向の通信と違い、双方向に映像と音を送り合う音楽セッションでは、少しのズレが大きな違和感につながってしまいます。自然な演奏を実現させるには通信速度や安定性が重要になってくるのですが、そこで「NURO 光」の強みを発揮できました。

そのイベントで、初めて触る楽器で楽しそうに遠くいる子とセッションを始めた我が子の姿を見て、お父さんが感極まってしまい子どもを抱き上げて涙する、といった瞬間がありました。そのとき「これは想像していたよりすごいことが起きているんじゃないか」と思いました。体験した子どもだけでなく、その周りの人の心も動かしているな、と。

その子はもともと楽器を習っている子だったのですが、その日をきっかけにこれまで以上に練習を頑張るようになったそうなんです。初めての挑戦が上手くいって、楽しくて、お父さんも喜んでくれて、さらに意欲につながったというのは、とても素敵な結果が生まれたなと思います。

阪井:翌年の幼稚園でのイベントでは、子どもたちも大人も最後は大合唱で楽しかったですよね。ソニーミュージックとも連携して、「窓」越しに所属ミュージシャンやアーティストに参加してもらったことで子供たちも本当に驚いて、喜んでくれていました。

幼稚園と、遠隔のスタジオにいるアーティストもつながった(2020年12月)

――通信と「窓」と音楽、まさにソニーグループならではの技術とコンテンツを活かした活動ですね。

阪井:楽しさやワクワクを追求していくソニーの映像音声技術や音楽コンテンツと同様に、ソニーネットワークコミュニケーションズにもNUROにも、「何か面白いことが起きる通信ネットワーク」というイメージがありますよね。今回の活動でも、根底にあるそのコンセプトが土台となって、ソニーの技術やコンテンツをつないで、新しい可能性を引き出してくれたのかなと感じました。

ちょっとマニアックな話ですが、森の中には多様な植物に混じって“菌根菌”という、土から吸収した養分を他の植物に供給したり植物同士のコミュニケーションを媒介したりする菌がいるそうです。NUROってまさに“菌根菌”みたいだなと。縁の下の力持ちいうか、見えないところでみんなが幸せになる基盤を作ってくれている。通信回線ってつながりにくかったり落ちたりすると「どうなってるんだ」って言われてしまいますが、逆に最高に良い状態だとそこにあること自体認識されないという。本当に大変ですが、これからの時代にますます重要になっていく役割ですよね。

テレビでよく観るアーティストがすぐそこに(2021年12月)

――コロナ禍の影響は、どのように捉えていますか?

渡辺:子どもたちは、運動会などのイベントがなくなったり、社会科見学などの課外活動がなくなったり、学校でもマスクや黙食でコミュニケーションが取りにくくなったり、おじいちゃんおばあちゃんに会う機会も減ったりなど、あらゆる機会が奪われていると感じます。そんな中で、インターネットを通じてつながりを絶やさない、新しい形でつながって、子どもたちの創造性や好奇心、前向きな気持ちを育めるような体験を届けられればと思っています。

相手が喋り出すタイミングが分からず同時に喋ってしまうことや会議後の疲労感がないのも「窓」の特長

――最後に今後の展望と、これから参加するかもしれない子どもたちに一言お願いします。

阪井:ソニーに入社して23年間、「窓」の研究をしてきましたが、この2年間は本当にすごい勢いでコミュニケーションの価値が変化しているのを感じます。今後は1日のイベントだけでなく、「窓」を一定期間設置して、どんな使い方があるか、どんなつながりが生まれていくのかを探索していけたらと思っています。

子どもたちへのメッセージは、そうですね。僕自身の精神年齢が低いので一緒に楽しみたいかな(笑)ソニーという場所で子どもたちと一緒に研究している感覚なんですよね。毎回とても勉強させてもらっています。なので皆さんも、ぜひ一緒に遊んでください!

渡辺:プログラムをより多くの子どもたちに届けることはもちろん、グループ内での連携ももっと探っていきたいです。グループ内には、ユニークな技術がたくさんあります。今はソニーミュージックと新しい広がり方を模索中です。横の連携を強めていけば、私たちだけではできなかったことにもチャレンジできると思います。また、全国の子ども食堂など子どもたちが集う場所への展開も視野に入れています。お子さんたちにはまっさらな気持ちで楽しんでワクワクして、心の動く瞬間が届けられたら、それが何よりうれしいです。


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