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農地にぽつんと立つ謎の棒……。スマート農業で農家を救う【ELTRES IoTネットワークサービス】

「目の前の田んぼにセンサーなんかいらない」

――導入前に聞かれたのは、そんな言葉でした。

「毎日見ている田んぼの水漏れに気づかないはずがない」

――それでも、気づかないことがあったのです。

田んぼに立つ謎の棒の正体は、「ELTRES™」(エルトレス)を活用した冠水センサー。出張中にアラームが鳴り、連絡を受けたメンバーが現地を見に行くと、死角になっていた道路の反対側から水漏れを起こしていたそう。

「誰も気づかなかったことを、このセンサーが教えてくれた。」
農事組合法人みずほの熊谷さんはELTRESについてそう話します。

ELTRESは、スマートシティやスマート農業、物流DXなど幅広い分野のIoT化を後押しする、ソニー独自のLPWA(低消費電力広域)無線通信規格。ソニーネットワークコミュニケーションズでは、ELTRESを活用したIoT向け通信サービスを提供しています。

今回は農業での活用事例から、導入によって現場にどのような変化が起きているのかをご紹介します。

ELTRES…長距離安定通信、高速移動体通信、低消費電力という特長を持つ、ソニー独自の低消費電力広域(LPWA)無線通信規格。見通し100㎞以上の長距離でのデータ通信や、時速100㎞以上で高速移動する電車などでも安定した無線通信を実現。GNSS(グローバル衛星測位システム)を活用した位置/時刻情報の取得も可能。

16mmの通信モジュールは指先に乗るサイズ。この中に「送信LSI」「GNSS LSI」「マイコン」「フラッシュメモリ」その他ELTRES通信に必要な部品すべてが搭載されている

【秋田県】水漏れを実際に検知。ELTRESが損害を防ぐ

▽導入前の課題
・従事者の高齢化による担い手不足
・新たな担い手となる若い世代の知識/経験不足

秋田県横手市では、多くの農家が70〜80代。若い世代が新たに加わっても、知識や経験不足から農業を続けることが困難になるというジレンマを抱えていました。

冒頭でご紹介した農事組合法人みずほの熊谷さんは、そんな秋田県横田市で稲作を営む農家の一人。250ヵ所もの広大な田んぼを見守るのは、今では高齢のお父さんたった一人になっていました。

稲作では田んぼの水漏れが発生すると稲がきちんと育たないため、毎日水が漏れていないかを確認しなければいけませんが、250ヶ所の田んぼを、たった一人で回り切るのは現実的ではありません。そこで導入したのが、ELTRESを活用した冠水センサーでした。

導入後に実感したのは、こんな変化だったそうです。

▽導入後の変化
・実際に複数の水漏れを検知。物理的に見守りができない出張中でも、水漏れに気づき現地ですぐに対応できた
・水漏れだけでなく、田んぼに水を張る作業の見守りにも使えることが判明した
・費用対効果が劇的に改善した
・浮いた時間を他の作業に充てられるようになった

費用対効果について、熊谷さんは「今までのやり方だと、見回りを行う人の雇用と、万が一田んぼの水漏れに気づけなかった場合の損失を合わせ約20万円の出費になる。ELTRESは約2万円の導入費用で見回りが不要になり、水漏れを確実に、しかも即座に知らせてしてくれる。この差は非常に大きい」と話します。

熊谷さんはこれからの農業に対し、「気合いと根性でどうにかなる話ではない」とも。経験と勘だけに頼るのでなくITの力を借りることで、自分の世代から次の世代へ、いい形で農業をつないでいければと語りました。

【福岡県】炎天下の作業時間を減らし、後継者不足の切り札に

▽導入前の課題
・熱中症など、夏場の労働環境への懸念
・従事者の高齢化による担い手不足

昨今、気候変動により日本各地で異常気象が発生し、夏は猛暑が続いています。特に福岡県では季節外れの台風やゲリラ豪雨の被害が大きく、田んぼの見回り強化が必要に。業務量の増加に加え、現在では多くの農家が高齢化に伴う後継者不足に直面しています。

福岡県で稲作を行う株式会社モアグリーンでは、その悩みを「ELTRES」が解決できるのではと考え、まずは試験的に導入しました。

ELTRESの冠水センサーを導入し、いくつかの変化が訪れました。

▽導入後の変化
・毎日おこなっていた田んぼのチェックが、週2回程度に削減できた
・浮いた時間を他の作業に充てられるようになった
・水位のお知らせ機能があるため効率良く動けるようになった
・水位の異常検知で不測の事態を回避できるようになった

モアグリーン代表・丸内さんと水元さんは「低消費電力で使える点がよかった」「周囲の農家の方が興味を示していた。特に若い世代の方々は農業に従事して行く上で先を見据えているため、このような装置の必要性を感じるのでは」と話します。

田んぼを守るという使命感から、悪天候の日に見回りを行い、不幸にも命を落とされる事故も起きています。そのような不幸を起こさないようにするために、ITにできることがあるはずと、丸内さんと水元さんは期待を寄せました。

【香川県】地域ならではの課題を解消 夜間の入水に役立った通知機能

▽導入前の課題
・香川県の土地の特性上、農業に使える水量が少ない
・田んぼへの入水に時間がかかる。場合によっては入水の時間帯に制限がある
・小さな田んぼが多く見回りに時間がかかる
・麦作と稲作をおこなっているため、スピーディーな収穫と次作物への準備を行わなくてはいけない

香川県は、降水量が少なく渇水が多いという独自の特性があります。そのため、ため池を多く作り、節水しつつ農業を営んできました。

水が少ないため、田んぼは小さく区分け。しかし、そもそも利用できる水量が少ないため、1枚の田んぼに水を入れるのに非常に時間がかかります。年によっては日中に取水制限(※)がかけられることもあり、そんな時はやむなく深夜から朝方にかけて入水を行うこともありました。
(※)取水制限とは、川からの取水量を制限すること

香川県高松市で80枚の田んぼを管理する佐藤さんも、やはり普段から入水とその見守りにかなりの工数がかかっていたそう。その見守りを効率化するためにELTRESを導入しました。

ELTRESの冠水センサーを導入して変わったことは次の通り。

▽導入後の変化
・田んぼに張り付いて入水が完了したかを確認する必要がなくなり、作業の効率化が叶った
・深夜に入水を行う際は、通知を目覚まし代わりにし、通知が来たら確認しに行くようになった。睡眠時間を確保でき、時間の無駄が無くなった

画像での入水確認機能や害虫駆除のための水質管理、入水そのものの遠隔操作など、より高機能になることでスマート農業がさらに加速しそうと見通す佐藤さん。

また、ELTRESの冠水センサーを設置した際、地域の高齢者らが「これ何や?」と興味を持ってくれたといいます。高松市ではスマート農業を推進しているため、行政が機械やシステムの導入経費を補助しています。「高齢者などスマホ操作が苦手な人でも扱える仕様になれば、一層導入が進むのでは」と期待を込めました。

「人が生きるうえで、安全・安心な社会をつくりたい」――ELTRESチームの願い

様々な場面で、あらゆる“困った”を解決するELTRES。
メンバーは次のように語っています。

「ELTRESはアイデア次第であらゆる場面でお使いいただけるものです。現在、物流・環境・インフラなどさまざまな業種で活用され、業務の効率化や安全の確保が叶っています。」

「私たちがELTRESを通じて実現させたいのは、人が生きるうえで、安全・安心な社会をつくること。多様な社会課題を解決し、より良い暮らしや社会を実現させていきたいと考えています。」

▼ELTRESの活用事例をもっとご覧になりたい方はこちらから


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※本記事は、ELTRESブログをもとに再編集しました。


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