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水泳とITは融合しない?その壁を乗り越えた「スマートスイミングレッスン」

昨今、様々なスポーツの観戦やトレーニングサポートにIT技術が取り入れられていますが、スイミング業界では長年、「水と電子機器は相性が悪いため、水泳指導とITが融合することはまずない」と言われてきました。その難題をパートナーシップで乗り越えたのが、「スマートスイミングレッスン」。
スポーツクラブを運営するルネサンス協力のもとソニーネットワークコミュニケーションズが開発。1社だけでは成し得ないものづくりができました。

ルネサンスとは「スマートテニスレッスン」の開発からのお付き合い。ものづくりを行う過程で良いパートナーシップを築くことができ、スイミングでも新たな取り組みをしてみようとなったことが「スマートスイミングレッスン」開発のきっかけでした。

水泳指導の現場に立つルネサンスの担当者とソニーネットワークコミュニケーションズの開発メンバーがこれまでを振り返りつつ、今後の展望を語りました。


水泳指導にIT導入。ソニーとスイミングスクールが協業に至るまで

小口:スマートスイミングレッスンを導入いただいてから約2年経ちました。サービス開始直後、現場では不安や戸惑いはありましたか?

井上さん:コーチを招集する緊急会議が開催され、スマートスイミングレッスンの導入について聞いたときは衝撃でした。今までやってきたレッスンがまったく違うものになるのではという戸惑いと同時に、新しいものにチャレンジできる期待感があったのを覚えています。

勝部さん:私たちがやりたいレッスンの形をいかに実現させるか向き合ってくださるソニーネットワークコミュニケーションズの皆さんの姿を見て、少しずつ不安はなくなり、ものづくりの精神に共感できたのを覚えています。最終的には「こんなこともできますか?」とオーダーするようにもなって。

特に記憶に残っているのは、導入の初日。これまでのレッスンと違い、子どもたちは「泳いだらタブレットを見る」という初めての動きをするんです。そこでソニーネットワークコミュニケーションズの皆さんも一緒になって子どもたちに声をかけてくれて、非常にありがたかったです。

スマートスイミングレッスンとは
ソニーネットワークコミュニケーションズが開発したスイミングスクール向けのスポーツICTソリューション

壁面や水中に取り付けたカメラが生徒の泳ぎを撮影
泳いだ直後に自分のフォームをチェックし、動画で得た”気付き”を次の泳ぎに活かせる
会員向け専用ページでは、レッスン中や進級テストの泳ぎを確認できる。
また、「レッスンのテーマ」や「お手本動画」で予習も可能

小口:懐かしいですね。初めて進級テストでスマートスイミングレッスンを試していただくとき、やはり最初はシステムトラブルもあり、慌てて別の方法に切り替えてテストを実施したこともありましたね。
導入後の、子どもたちや保護者の方の反応はいかがでしたか?

井上さん:今までのレッスンでは、子どもたちの視線を集めるのに苦労することもあったのですが、導入後は「タブレットを見てみよう」と言うだけで、子どもたちの視線がさっと集まるようになったんです。これはすごいと感動しました。
子ども向けスイミングコーチの仕事では、安全を考慮し水泳を教える技術だけでなく、子どもたちに話を聞いてもらうスキルも必要になります。経験の浅いコーチだとしても、タブレットがあることで子どもたちを集中させられると感じています。

勝部さん:導入前の進級テストではコーチが書いたコメントを保護者が確認していたのですが、文章だけでは課題や成果がわからないことも。映像があることで、子どもと見ながら、「ここが上手になってるね」「ここを変えたら次は合格できるよ」というサポートができるようになったという声をいただくようになりました。

小口:以前、他のスマートスイミングレッスン導入スクールと情報交換されたうえで、フィードバックくださったこともありましたね。

勝部さん:競合関係ではありますが、スマートスイミングレッスンを通して情報交換をする機会が増え、研修に同席させてもらったこともあります。競合他社の研修の場に参加することはめったにないのですが、「子どもたちに対してもっと良い環境を作ろう」と、スマートスイミングレッスンを通して会社の隔たりなく一緒に動けているのがすごくうれしいです。

フットワークが軽すぎる開発者たち!? 現場と向き合う面白さとは

勝部さん:小口さんは、関東エリアで導入したほとんどの店舗に足を運び、各店のコーチともコミュニケーションを取ってくれましたよね。私たちから見てソニーネットワークコミュニケーションズの開発者の皆さんはフットワークが軽い印象です。開発者が現場にまで赴くのは珍しいことではないかと思っていたのですが、なぜですか?

小口:現場の声をしっかり聞いて、スピーディにPDCAを回すことが重要だとわかってきました。現場でどのようなお困りごとが出ているかを知ることで、より良くサービスをアップデートしていけると手ごたえを感じています。本当は、初めてスクールに伺うときは緊張しましたが、いざスタートしてみると、現場を見ながら開発を進められるのが楽しくて。

開発メンバーは、水泳指導の現場で生徒の動きを観察し、サービス企画者やコーチの意見を聞きながら、プロトタイプ開発を進めている

小口:久保寺さんは、もともとスマートゴルフセンサーなどの製品開発を行なってきましたが、スマートスイミングレッスンにおいてはAI開発に転向、八田さんも本業のウェブディレクターから、UI・UXデザイナーに挑戦しています。どのような楽しさがありましたか?

久保寺:私は、経験したことのない開発ができたのが楽しかったです。製品開発は量産に向けて試作と検証を重ね、完璧な状態でローンチするのがゴールですが、スマートスイミングレッスンは進化し続けるのでいわばローンチがスタートです。ローンチ後の運用を見据えて開発し、運用しながらAIを成長させていくもの。そこに大きな違いがあり、新たな経験を積めました。

スマートスイミングレッスンでは「導入してから初めてわかること」も多かったんですよね。水の中で使うことに加え、同時刻に100名近い生徒の泳ぎを記録するため、どのようなトラブルが起きるかは現場に行ってみないとわからないこと。追加学習や状況に合わせた修正も必要で、AIの成長に協力いただいたコーチのみなさんには感謝しています。

八田:私も、エンドユーザーであるコーチや子どもたちと直接話せたのがすごく刺激的で。伺うたびに発見がありました。

私はこれまでウェブディレクターとして「万人が使いやすいページかどうか」を考えてきましたが、今回はUI・UXデザイナーとして、「限られた人が特殊な状況で使う画面を作ること」を念頭に選手クラスのコーチタブレットのインターフェースを設計しました。コーチはプールサイドで水に濡れた状況で、タブレットを使いますよね。特殊なシチュエーションでの使用感を探る、プロダクトデザイン分野の仕事でした。今までにない経験ができたと思います。

選手クラスの記録機能。成長の記録を可視化、自己ベストの更新が一目でわかる。
タイム向上を目指す選手のモチベーションアップにつながる。

久保寺:この経験を通じ、今後別の開発を行う際には、一段階上の視点で仕事ができるんじゃないかと感じています。初めての挑戦にあたり、八田さんは何か苦労したことはありましたか?

八田:普段の仕事でもそうですが、使いやすさと見た目の美しさの融合は特に苦心しました。「使いやすいけど見た目がワクワクしない」「見た目はいいけど使いにくい」のは納得できなくて、現場に足を運び、落としどころを探せたのは面白かったです。

小口:転職せずに新しい職種にチャレンジできるのは、ソニーグループならではの柔軟さであり、面白さかもしれませんね。支えてくれる環境があることを感じます。

水泳って楽しい! を感じられるツールに。スマートスイミングレッスンで実現させたいこと

小口:映像や記録のデータを活用することで、お客さまが楽しくスイミングを続けられそう、といった手応えはありますか?

井上さん:ありますね。従来、ジュニアクラスは中学生になると「これ以上は早く泳げないかな」と感じてやめてしまう生徒が多かったんです。スマートスイミングレッスンで自分の泳ぎを見る機会が生まれたことで、「ここを直せばもっと上手になりそう」「コーチのアドバイスってこういうことだったのか」と感じてくれるようになりました。

勝部さん:上達に喜びを感じることで水泳を続けられ、その結果、中・高校生になった以降の身体づくりや、学業・受験のストレス発散の場になるとうれしいですね。子どもの頃から水泳を続けることで、大人になっても運動が習慣化され、健康的な暮らしが送れるのなら、これ以上の喜びはありません。

八田:スマートスイミングレッスンを通じて、あらゆる年代のひとが「水泳楽しいな」「もっと続けたいな」と感じてくれればいいですよね。

小口:スマートスイミングレッスンを通じて実現させたいことはありますか?

久保寺:少し漠然としますが、かつて「水泳指導とITが融合することはまずない」と言われていたように、今はだれも想像できないような新たな価値を生み出したいです。
また、ソニーはエンタテインメント関係のサービスやコンテンツがたくさんあるので、スマートスイミングレッスンにお子さんが喜ぶような楽しい仕掛けを追加できると面白いかなと思っています。

井上さん:それはきっと子どもたちが喜びますね!実現するとうれしいです。

小口:使うことがより楽しくなるような要素も加えつつ進化させ、今後はさまざまなスポーツでエンタテインメントできるようにしていきたいですね。

この活動に興味を持った、または、ソニーネットワークコミュニケーションズについてもっと知りたいと思ってくださる方は、ぜひ「スキ!」やシェアで教えてください。


本記事はルネサンス公式noteとコラボレーションしました。ルネサンス公式noteでは【前編】として開発初期から関わる両社の担当者が開発の背景や水泳への想いについて語ります。

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